オズの実践トレード日誌
トニー・オズ
パンローリング 四六判 440頁 2001年8月発売
6,090円(税込) ★★★★★+
まず、評価からいきますと、5つ星プラスの本で、最高評価としました。
その理由を書きます。
この本は、かなり前に出された本で、ご存知ないかたも多いんじゃないかと思います。
いずれは紹介しようと思っていましたが、新刊中心で考えていたので、タイミングを逸していました、というのは言い訳で、実は、正直なところあまり紹介したくない本でした。
しかし、ある方に質問されたことのコメントに丁寧に答えるのが面倒なので、つい本の紹介しますから・・・と言ってしまったので、仕方なく紹介します。
以下の文章は、個人的に本の紹介をお問い合わせいただいた方に対して、極秘でご紹介したときのお返事をベースにしています。
罫線売買航海術、トレーディングエッジ入門というのは、理屈です。
確かに戦略やエッジ、心理ということについて言及はされていますが、さて、実践となると、既に実践でそこそこ経験がある方にとってはいいのですが、初級者がこれを参考にとなると、難しいと思います。
ということで、オズの実践トレード日誌ですが、デイトレードの参考書として、これ以上の本はないと思います。
初心者でも受け入れられるやさしい言葉と、戦略ですが、だからといって、決して初心者向けの本ではありません。
私も今でも、最も何度も読んで、参考にしている本です。
ラインマーカーだらけで、本がかなり痛んでいます。
ただ、初心者が陥りがちな罠として、エントリーの売買手法、売買戦略こそが相場で勝つ道だ、と、信じて疑わない人にとっては、物足りない、となるかもしれません。
何故なら、この本には、サポート、レジスタンスを中心とした売買戦略しか掲載されていないからです。
ですから、この本の評価は非常に賛否がわかれるところだと思います。
ちょっと値段が張りますし・・・
実は、この本の価値は、戦略で相場を勝つのではない、と気がついた上級者こそが本当に価値を見出せる本なのです。
難しいのは、ここだと思います。初心者ほどこの本の価値を見つけられないんです。
この本には、トニー・オズの実際の売買記録が日々詳細に書かれています。
何故エントリーしたのか、何故、利食いしたのか、何故損切りしたのか。
つまりは、プロ投資家の横で、トレードを見せてもらっているようなものなのです。
それも、詳細な解説がついて・・・
これは、多くのトレーダーが最も知りたいであろう具体的なエントリーポイント、損切りポイント、そして何故、エントリーし、利食いし、そして何故損切りしたのか、など要因全てわたって、詳細に言及されているのです。
実は、相場の儲け方、利食いの仕方、については多くの本で書かれていますが、相場の損の仕方、損切りの具体的なポイント、について詳細に書かれた本は見たことがありません。
しかし、この損の仕方は、とんでもなく重要なことなのです。
しかも、その損を出してしまったときに、プロはどのような心構えでいるのか。
どのように損のトレードでの心理面のダメージを克服するのか。
という心理面の問題にも言及されています。
もう・・・ここまで書かれたら涙ぐんでしまいます。
これほどの内容なら、数十万円しても私は買うと思います。
実際に、数年前にトニー・オズが日本にセミナーをしたときに受講しましたが、その時のセミナー代が15万円程度だったと思います。
しかも、驚くべきことに、その内容は、この本より低かったと思いました。
プロのデイトレーダー、それも超腕利きのデイトレーダーが、横で売買しながら、何故、売買したのかを教えてくれる、そんな夢のような本が、この本です。
この本を読みこなせるかどうか、もし、本当の意味で読みこなすことができれば、この本1冊で、プロのデイトレーダーになることが十分に可能だと思います。
私とて、家族3人が私のトレードの利益だけで生活していますが、このトニーの本の範囲内のトレードテクニックが中心なのです。
というより、トレードテクニックなど、実は大した問題ではないのですが・・・
実は、私は、もともとトレードをきわめて複雑に見ようとして、もがき苦しんだ日々を10年以上送っていました。
当時は、複雑なオシレーター類の道具を難しい計算をして、どんどんどんどんと複雑に複雑にしていったのです。
国内で出版された本に飽き足らず、海外の本を買い求めて、人工知能などより複雑なテクニカル分析を追いかけて、もう餓鬼のようになって追い求めていました。
なまじチャートソフトやエクセルなどを使いこなすことができたので、さらにどつぼへ嵌っていきました。
そうなんですよ、川崎さん・・初心者は、ついつい複雑化の作業をしてしまうんですよ。
色んなオシレーター、STCやRCIなど、色々と使いこなすことが儲ける道だと、思ってしまうのです。
色んな指標を持ってきて、複雑化することがトレードの勉強と勘違いしてしまうのです。
そして、その結果、努力して努力して、複雑化をすればするほど、判断ができなくなるというジレンマ、ドツボにはまってしまいました。
しかし・・・あるきっかけで、集約化して本質を探る作業がトレードに勝つ秘訣だと気がついたのです。
やっとやっと、答えの見えない地獄の日々から開放されて、まともなレールに乗ることができたのです。
相場を理解するといういうことは、複雑化するのではなく、単純化するということなのだと・・・
そして・・・単純化できるということは、相場の背景にある本質の理解あってこそということ・・・
それは、残念ながら自分で気がついたのではなく、野川徹氏という相場師の教えがあったからなのが、情けないことなのですが・・・
複雑な道具を集めること、複雑な道具をいっぱい使うこと・・・そうではなく、単純な道具を使いこなすこと、こそが本質だと気がついたのです。それも、一見、誰でも知っているような簡単なものが・・・
もう、トレードを始めて20年が経とうとしていました。
このあたりのことは、私の
別のブログにも書いています。
このような道に入らないようにと、アホな投資家の回り道人生を書いています。
プロのトレードは、極めてシンプルなので、それに気が付けるかどうか、それが踏み絵だということが理解できれば、中級者から上級者への門が開かれたのと同じです。
しかし、これは回り道をしてこそ気がつけるものでもあり・・難しいですね。
相場を目指そうとする人が一度は入らないといけない道なのかもしれません。
しかし、その道に10年も20年もいる必要性はどこにもありませんね。
1~3年ぐらいで十分じゃないでしょうか。
そういえば、師匠の野川氏も、実は、複雑化の道を進んで相場が見えない時期を経験されています。その期間は数年と私と違って短かったのですが・・・
それから、本はできるだけ沢山読んでください。
トレードの損にくらべたら安いものです。
沢山読んでわかることは、ほとんどの本が役にたたない、ということです。
しかし、沢山読まないと、何がよくて、何がだめなのか、それがわからないんです。
一見、手法が書いてあって、これがノウハウだ、というような本はだいたいだめです。
だめなものが見えることによって、良い本の価値が見えてきます。
多くを当たることによって、本質が見えるのです。これにも時間がかかります。
全てを当てようとしても、これは難しいです。
私は、たまに海外旅行に行きますが、そのとき、海外に出て、はじめて日本の良さがわかるのです。
外から見て、はじめて日本という国の本質が見えてくるのですね。
トレードも同じです。全てを当てることは不可能です。しかし、どれがいいチャンスで、悪いトレードなのか。損を積みかさねて、経験を蓄積しないと、なかなかその選球眼がつきません。
これは、職人技を身につける過程と全く同じです。
陶芸家の土の見極め、火の加減、など、最初からわかることなど1つもないでしょう。
それと同じです。
凄腕トニーが、その売買を惜しみなくトレードを見せてくれている本の価値は、数十万円のセミナーを行ったこと以上の価値があります。
この本を読んで、トニーと一緒に何度もプロトレーダーの売買ポイントを繰り返し繰り返しトレースしてみてください。
そして、自分なりに考えてみるのです。
自分ならどうしているのだろうか。
ここでエントリーしたのは何故なんだろうか。
ここで損切りできただろうか。
ここで利食いしただろうか。
それと、こうやって売買している一連のトレードを通して、結果としては利益にしている、ということを感じてもらいたいのです。
一回一回のトレードでは、勝ったり負けたり・・・大したことないじゃないか。
トッププロっていったって、結構負けてるじゃないか。
それぞれのエントリーを常に葛藤をしながら売買しているじゃないか。
プロといっても、悩んでいる、俺たちと同じじゃないか。
当たり前の売買しかしていないじゃないか。こんなのがプロなの・・・
感じてみてください・・・神業のような相場の読みがあって、常人には決してマネのできないようなポイントで売買するのがプロだということでは決してないということ。
しかし・・・そんなトニー・オズが、結果的にはトータルとして利益に回してきているのはどうしてなのか。
そっ、そうなのか・・・一連の売買で利益を出す、ということは・・・
かっ、悲しいけど・・これが相場・・・
わ、わかった、わかったよ…ララァ…
人はわかりあえないといけないんだ…
理屈だけではなく、こうやって繰り返すことによって、見えてくるものが絶対にあるんです。
理屈っぽい大人は、どうしても理屈から入ろうとします。
しかし、トレードの中でも、特にデイトレードは、理屈だけでは片付かない部分が非常に大きいものだと思います。
でも、世の中、理屈ではなくフォースを感じないといけないこともあるんです。
習うより慣れろ・・・
ララァ私を導いてくれ!!
みたいな・・
この一冊、という本を選べ、といわれれば間違いなくこの本を推奨するでしょう。
それだけの本です。
高い本ですが、何万円もする情報商材の何十個分の価値は十分にあります。